詩歌

川柳

ナバテアという音なぜか思いだし 「と/いう」という跨りをよく使い

短歌5首

ISO 感度 400i のフィルムなら夢の残滓を撮れるだろうか 倒れたる人形の下に隠された文を忘れて踊りに行った 死の恐怖それは〈私〉のないことというより〈他者〉の顕れぬこと それぞれの命への思い異なるという異なりも人それぞれで 蝉を見て怖がる娘見て嬉…

短歌14首

mixi に足跡ありし女の子足の形を想像しよう もしかして待兼山から離れたら歌が詠めなくなるのだろうか なにかから解放されたい気がするがいったいなにから解放されたい? 意味もなくリロード・ボタンをなん回も押して今宵の夢を恐れる 赤色の携帯電話を好む…

短歌4首

ああ今日もけっきょく独り残されてあられが湿気るだれか呼ぼうか 目指す先魔法のような三日月の独りの星を従えていて 玉のごと豆をどれだけ入れようとつまりはきみを引き立てるため 虫の音は綺麗だけれど馬追はうるさいのです要らないのです

川柳

恋破れ快晴なれど星見えず

短歌5首

この国の六十四年前の elle a été 「事実」以上をいまだ覚えず 罪なしの不自由さから逃れたく神の御業にわれ穴穿ち 立ち止まる生きることの意味分からなくなるだけど死にたくはないんだ たのむからぼくを騙して「すっぴんでもきみならまあいいかなと思って」…

短歌5首

15の日きみと一緒に飲みたいなぼくら自身の魂のため 早朝の部室に眠る人おりて思い出したり流星群と 朝9時の図書館前に並ぶ人本を求めて涼を求めて あの人が院試に受かるという夢を見たのはおれだきっと落ちてる わがそばに居るのは独り子猫のみ麦酒を勧める…

短歌8首

ああわれら大学生は傲慢だ 夜勤の人に共感覚え いま来れる人にアット・ランダムでメールを送る機能が欲しい 吸い殻の山に混じった褐色がおれの弱さを示すと思え きみの住む街と同じ震度だね 独りの朝に揺り起こされて 地震報震源地には知り合いはいませんで…

俳句4句

現実のいく重もなりて茸雲 蝉よりも早く落ちたるわれの恋 蝉どもは思いを遂げて落ちてゆく 涙目で蝉の落ちるを踏みつける

短歌3首

原爆をすら美しいと云えるよな無邪気が人を連れゆくかたは…… なぜだろう今日の Lark はいつもより辛い気がする側に居るのに 7月は大嫌いだと叫んでたわが身を落ちる蝉に重ねて

短歌5首

なぜ原チャとは云うのに原ケッタとは云わぬのだろ と名古屋の友と 古語の「ん」は推量だなと確認す否定で「ん」を用いるわれは この月を見てドット絵を思い出す世代の最後ぼくは位置する もう朝か?マクドからみる街の色灯の明るくて騙してくれる こんなとき…

短歌6首

うぎゃあ!また友人が "@" マーク前 "." のあるアドレスにした…… マクドにてラーク片手にペンギンを ああ明け方のバドが飲みたい 進学か就職かにより30の感慨はたぶん違うんだろな 徹夜明け数時間後に授業行くあがために添い寝する人はなし Mahler の2番を T…

短歌14首

Lévinas の無限責任思い出す「済みません」はあまりに重く この娘なぜそうするのかが分かるから恋の相手にはならぬのだな 部室にてわがそばに寝るきみそれは自室に招くと違わないのじゃ? フラ人が ユニオンは明日にオニオンはスープになる と言っていました…

短歌9首

本日の自室滞在1時間ここにはだれも来ぬと知るから 一度は不幸になってもこのおれが救ってやる とは云えないよなあ われいつも嵐の朝に生まれ出ずなんら特徴のない嵐の わが側にだれも居ないせめてもの近くの部屋のピアノの音色 わが母の面影をもつ少女泣く…

短歌4首

諦めしわれに希望をあたえたる車の消えしに茫然と在る 遅すぎた気付くのがあまりに遅すぎた愛をいったいだれにか語らん 遅すぎた青春に後れたくないよしよう深夜の勉強会を わが側にだれも居ないせめてもの近くの部屋のピアノの音色

短歌4首

戦争とう言葉の意味も知らぬまま反戦の歌を詠うことできず きみという金糸の本に目移りし文字おう速度はたしかにおちて ラブ・ソング聴いてるうちに忘れてた死への恐怖なぜか蘇り 本当に逢いたい人は遠すぎてきみに逢いたいふりをしてみる

短歌3首

魂の不死などもう望まないからこの退屈から連れ出してくれ ただ一つ水出し緑茶ということをたよりに夏の坂道をこぐ なにひとつしなかった日に湯を浴びて汗流すことに感じる罪悪

短歌3首

甘藍を剥いた芯見て8月の6日の近きが思い出された 夢のなか曇り空下ピクニック覚めて目をさす昼陽の光 野菜さえ美味くなければ夏なんてところにゃにどときてやるもんか

短歌5首

われのごと試験監督居る部屋で子らは安らに解けるだろうか 一度とも通わなかった塾という空間でいま子らを監る違和 この子らの中にも格差あるらんと思えど実感なきは傲慢? 痛いからでも悲しいからでもなくて眠いからから寝るとうことの幸 朝風呂のあとに Co…

短歌6首

“短歌では[……]言葉の嘘が許されます”俵氏云うが Kant 許さじ 濃紺の制服着背を向けソファーに寝ていたきみはきっときみじゃない なによりも会いたい人は居ぬだろと分かっていながらたが居ると問う すべて歌に虚実ない交ぜに詠えば新たな現を見出せるやも …

短歌4首

あの子とはいつから会わぬ恋人を従妹と偽り寮へと招く 図書館に春樹全集欠番が多く孤独の夜はすぐそこ 右目にて見れば Joan Miró のよう腕の黒子に落つる髪の毛 待つことは楽しくもあると思い出すボンゴレのため砂抜きをして

短歌3首

3度目の朝にきみは綺麗だと言えたら賭をつづけられたのに ぼくがこんなにまいっているのは夏の暑さのせいにすぎないのです なに1つきみには云わぬ Husserl の「超越論的」理解するまで

短歌4首

わがうちの吟遊詩人心病みどこへともなく行ってしまった 暗室の現像液の最中〔さなか〕より浮かび迫り来る あなたが好きだ 宿酔の朝環状線に乗り続ければきみのところに辿り着けるかな ああ今年はいったいだれに頼れよう鬼門の月はふたたび来たり

短歌4首

カラオケに行く金ないから自転車の軋みの上に歌っているよ デジタルの腕時計のバック・ライトのピュイーと鳴りて暇はまぎれず この夜にきみも孤独であったらと願ってしまうを愛は許すか? つきぬけるみ知らぬ声の姦しさ求める人はその中になし

短歌3首

来ぬ人を待兼山の部室にて外姦しきを独り聞き居る 酒よりも煙草よりも歌を頼りに満たされぬいまを生き抜きたい おまえ待て待て待て待て待て寝つつ待て寝て寝て寝て寝て寝て寝つつ待て

短歌4首

朝の麦酒はなんでこんなに美味いのか恋に気づいた乙女のように 金色の乙女の恋するお相手は France 生まれの Gitane Caporal 金色の乙女の舌の雄雲雀の舌と絡みて戦慄をする 恋がすべて仮象であって悪いかとそう問うぼくは独我論者で

川柳2句

夏場には市のゴミ袋大きすぎ 援団の楽は肴になりはせぬ

俳句

夏便所魚の気配吐き気増す

短歌4首

つまらない町でつまらない男がつまらない歌を歌っていました。 今日一日喫まずにおくとわざわざに思うほどには煙草の増えて 顔知らぬ女と目合〔まぐわ〕う白昼夢教師の声のますます高く 空調の音に雨音のまじりてわれあの部屋とあまりに遠し

俳句

朝の酒白む空抱き飛んでいる