丸山圭一郎 『ソシュールの思想』

シニフィエシニフィアン、恣意性などの概念により、現代言語学の基礎を作り上げた言語学者、フェルディナンド・ソシュールの思想に関して、容易とはいえないまでも、分かりやすく書かれた本である。ソシュールの思想は構造主義の基礎にもなったものであり、認識論など言語学以外の観点から見ても、大変興味深かった。本書で述べられている言語の恣意性という理論を、実際のコミュニケーションやアートの解釈などに当てはめることによって、物事の見方も少なからず変化したころからも、ソシュールの思想の与える影響の大きさが実感される。

ソシュールの思想の中心にある、我々が事物を思考するためには、混沌とした全体である実質を、言語によって区切る必要がある、という考えは、哲学の分野の中でも、認識論に特に強い興味を持ち、又、人間は言語により苦悩するのではないだろうか*1、という考えを以前から持っていた僕にとって*2、従来の自分の思想を発展させる上で、大変役立ったと思われる。

データ

単行本。1981年岩波書店刊。384頁。

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*1:この辺りはラカンの思想と繋がってくると思われるので、今読んでいる『ラカン精神分析』を読了後に詳しく述べたい。

*2:それ以前には苦悩は孤独に起因する、と考えていた時期もある。その頃に書いた『李徴の孤独』という文章に、それが顕著に現れている。