6/21 『阿修羅ガール』 此岸と彼岸

此岸と彼岸の均衡感覚において、田口ランディよりは優れているが、町田康には及ばない、といった感じである。主人公は自身の彼岸体験を相対化して見せているが、それに比べて作者が充分に相対化しきれていないような印象を受けた。

尤も、臨死体験という道具を用いることによって、此岸と彼岸の描写を切り離している(互いに侵食は見られるが)本作を、此岸と彼岸を半ば連続的に繋げることによって、逆説的に此岸と彼岸に対する幻想が相対化され、近郊感覚が成立している町田康の諸作品と単純に比較することはできないだろう。

文体はもう少し弾けても良いぐらいじゃないかな、と思う。弾け具合が中途半端で却って読み難い。