短歌 19 首

ようやっと帰りついたるその場所に独り待ってたきみは本物? *1

ただ一つその発言をする勇気ないからほかの言葉で埋める

街の子も塀を登れば山がある侮るなかれ想像力を

夢で見たことすら人に話すことできない恋をでも捨てられず

上階は奇術研究会のはず美女を真っ二つにする音か?

中性という幻想をあの人に被せてみるがなにか足りない

悩むべしあなたの内の乙女子の命長くと願うのならば

存えば忍ぶる恋の叶うこと夢の中では増えると信じ

足りぬのは手の温もりじゃないですか? そう問うきみの手はキーボード

いまぼくが煙草を欲しいと思うのは焦げ跡をここに残したいから

火の消えた煙草をそこに押し当てて焦げ跡つけるふりしてみてる

レティクル座行超特急」を聴いてるとすごく不安な気分になって*2

大丈夫じゃないことはもうわかってる蜘蛛の糸まだ切れないよなぜ*3

不安だよハッピー・アイスクリームとね言ってみてもねまだ不安だよ*4

やっと「香菜、頭をよくしてあげよう」で恢復してもでも悲しくて*5

ノゾミ・カナエ・タマエを弔うため煙草吸い込み外はもう朝の空*6

今日はいい花見日和になりそうだビールを飲んで寝るのがいいさ

いまならば春だからと云いあの人もわたしのことを受け入れるかも

おのれをも危うくするよな嘘をつくきみに近づくただそのために