東浩紀・宮台真司, 『父として考える』, 2010年

父として考える (生活人新書)

東浩紀, 宮台真司両氏の対談を収めた『父として考える』は、ぼくの卒論の主題である共同性という主題について、非常に示唆的な点が多かった。ある意味、 ぼくの書こうとしていることを、圧倒的に上手く下書きされてしまった という感すらある。

とくに、共同性の正負両義性は、まさに、ぼくの卒論において中心的な部分の 1 つとなるはずの問題であり、実際的な育児の体験や親族/地域共同体についてのフィールド・ワークに基づいた両氏の議論は、より深い考察を促すものであった。また、 それが親族/地域共同体のような歴史的共同体であれ、それいがいの会社や趣味サークルといった共同性あであれ、そこに (再) コミットするうえでは、ソシャル・スキルが重要である という論点には、ぼくの論を共同性における個人の実践的態度の問題へと結びつける糸口があるように思われる。複数の共同性へのコミットメントという点についても、本書を読んだことにより、その重要性がさらに強く感じられるようになった。大学院進学後の研究の中心は、このあたりに設定するのがいいかもしれない。

ただし、本書においては、ソシャル・スキルを中心とした共同性の有り様を涵養するものとして、温情主義パターナリズム的な考え方が持ち出されており、この点については、ぼくの立場としては、なんらかの批判的な検討をおこなった後に返答する必要があるだろう。