短歌 8 首

温泉地 飯の高くて N くんは ガストはないか と言い出す始末

東京は夜の七時 と送っても歌の続きをきみは知らない

流星を探す代わりにきみの背の黒子を数え願いを告げる

賭けのごと薄き願いは星よりもむしろ微小な世界へ告げよ

わがうちに混じる半身の乙女とて夢見るファリック・ガールにすぎぬ

11 月 54 日の世界からクリスマスのある世界に戻る

この雪を掘り返してもピストルや折れた翼は見つけられない*1 *2

雪の朝ダルジュロスにぞ扮したる娘の投げし玉は外れた*3

*1:cf. 俵万智, 『サラダ記念日』.

*2:re. いたく錆びしピストル出でぬ / 砂山の / 砂を指もて掘りてありしに (石川啄木,『一握の砂』).

*3:cf. 萩尾望都/ジャン・コクトー,『恐るべき子供たち』.