短歌 16 首

艶本を背伸びしなけりゃ届かない場所に置くのは父親だけか*1

本当のことを言ったらもう人は詩でおのれを救えなくなる *2

純粋なキッチュとしての新世界よりの響きを Inbal は振る*3

ちはやふる神ではあらぬ あらぶるというわけもなし ただ黙すべし

そういえば昨夜卒業論文を棄却されるという夢を見た

あのころの枕使えばたぶんぼく悪夢を見るよ でも耐えられる*4

ほんとうはそれほど煙草が喫みたいというわけじゃないでも買いに行く

スーパーの閉店時刻も 1 時間早くなったしもう諦める

真夜中のこの空腹を癒すにはまともな菓子かきみじゃなきゃ嫌

受胎すらしなかったわが子のために Kindertotenlieder を聴く

Eva なんてきっと見てないあの人に 気持ち悪い と云われた凹む*5

血液型問われ + と答えたら B 型だねと云われる悲しさ

ちはやふる神ではあらぬ あらぶるというわけもなし ただ黙すべし

語られる 70 年代に憧れ インターネットがあれば行きたい

神の名を街路で叫ぶその人にわたしの生は見えるだろうか

バーボンの熱に浮かされ行く先はスノウ・ドームの中の公園*6

*1:Re. 猪瀬直樹村上隆東浩紀,「非実在青少年から「ミカドの肖像」へ」,〈思想地図β〉1, 拾貳頁.

*2:Cf. 大江健三郎,『万延元年のフットボール』, 225 頁以下.

*3:Cf. E. Inbal, the Phil, A. Dvořák, 交響曲第 9 番 „Z nového světa“, 1990 年.

*4:阪大短歌会第 1 回歌会, 詠題「枕」.

*5:Cf. http://twitter.com/#!/yuta3_21/status/17413581978.

*6:阪大短歌会第 1 回歌会, 詠題「枕」.