ある朝

夢の中でぼくは
あの銀行員の先輩のように
まじめにスーツを着て
後輩どもと飲んでいた
ああせめて無職であったならと
ぼくは思ってしまったのだ

スピーカーは
アンプの影響を受け
生硬い音で鳴っている
(あるいはそれは
 ぼくの耳か頭のせいだろうか?)

眠る前にぼくは
円城塔のあとにある種の詩を詠むことについて
 すなわち
 自らがある種の詩を詠むことの困難について
考えていた
だがそもそもぼくは
吉本隆明の詩のあとに生まれたものであるという困難のうちにいるのだ
そのような困難を
鈴木志郎康吉岡実については感じない
かれらはむしろ
ぼくが詩を詠むということについて
希望を与えてくれる
とはいえ おそらく
円城塔吉本隆明
まだその小説を あるいは詩を
書く あるいは詠むまえであったとしても
ぼくはろくな詩など詠めやしなかっただろうと
そういう結論が頭を過ぎりもする……

そして  そうだ!
まず ぼくは
 しっかりと生きていかなければならないのだ!

 そうしなければぼくは
 残された希望すら失いかねないのだ

コーヒー豆は切れている
茶やほかの飲み物や煙草ではきっと
この朝を十全に生きられない
そう口に出し
ぼくはぼくを騙し
喫茶店へ向かおうと
眠る人たちを起こす