藤原正彦 『国家の品格』

[『国家の品格』書影]

新聞の書評や、他ブログで紹介されていた本を図書館で見つけたので読んでみた。既に返却して(珍しく次に予約が入っていた)手元に本がなく、引用などもできないので、簡単に書くことにする。

細かいところを見て行くと色々と反論したい部分もあったが、全体的な方向性としては、いうほど悪くはなかったように思う。例えば、日本人はもっと愛国心を持つべきであるが、その愛国心は非ナショナリズム的なものパトリオティズムというらしい)でなければならない(ナショナリズムは忌むべきものだ)という意見は、僕が以前から日本という国に対して持っていた思いと非常に近いところにあるものだと感じた。そしてその延長線上にある、国際人を育てるためには、小学校から英語教育をするよりも、もっと国語力を高めるべきだ、といった意見にも納得のいくものが多かった。

理論は確かに大切だが、情緒も重視すべきだという考え方自体は、それ程目新しいものではないが、日本人が忘れかけていたものであり、それを思い出させてくれるという意味では、それなりの価値はあると思う。福田和也氏の『なぜ日本人はかくも幼稚になったのか』のような、突飛にさえ思える過激さ、といった類のものもそれ程ないので、取っ付きやすく多くの人に受け入れられるだろう。ただし、本来それ程説得力のある本ではないにも拘らず、その取っ付きやすさゆえに、充分な思考をなさずに容易に受け入れられてしまう危険性があるともいえるだろうが。

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