2010-01-01から1年間の記事一覧

短歌 13 首

カッターの芯を折るとき 根元から折れてしまえ と密かに望む あの人は白い下着を洗うとき漂白剤を入れるだろうか 薄汚れたブラウン管の TV の画面に指で 生きろ と書いた タッカーに 1 本芯を入れて持ちその 1 本も錆びるまで待つ 俊足の少女になりたい 秋の…

短歌 18 首

欠損は埋まったのです 双色のジグソウ・パズルのようにではなく 直観で恋をしているぼくたちに排中律は要らないのです 生き延びた者を殺した罪のもとぼくはあなたをけして許さぬ ぼくたちの間主観性の実在を信じてみよう 詩人として こうやってまた郷愁が増…

短歌 27 首

たれをかも会う人にせん 決め倦ね ただ偶然を待兼の山 眠れない暑い空気のせいじゃないむしろ温度の欠如がゆえに 夢がもう叶わなぬことにうすうすと気づきつつある少女のように まだ中二病から抜け出せない少女 ぼくの隣でポエムを詠んで 本物のファリック・…

自ら自身の語り口/文体と言語の多様性在住外国人との語り合いカフェ「母語とはなにか」をとおして

15 日に、阪大のオレンジ・ショップで開かれた在住外国人との語り合いカフェに参加した。 母語とはなにか という主題のもと、在日外国人の方や国際結婚をされている方の経験談を含め、さまざまな立場からの意見を交えて、興味深い議論ができた。ぼくは、3 度…

許されないことは、いかなる状況においても、許されないが、しかし……

E. Kant の、 いかなる場合でも嘘を吐いてはいけない という考えは、しばしば非難に晒されるが、これは、ある意味においては、適切なのではないだろうか。嘘の例はともかくとして、 いかなる場合でも許されない と捉えるべきことはあるのだ。とは云え、その…

東浩紀・宮台真司, 『父として考える』, 2010年

東浩紀, 宮台真司両氏の対談を収めた『父として考える』は、ぼくの卒論の主題である共同性という主題について、非常に示唆的な点が多かった。ある意味、 ぼくの書こうとしていることを、圧倒的に上手く下書きされてしまった という感すらある。とくに、共同…

匂い

かの女の煙草の匂いは いつも朝には消えてなくなる ぼくの煙草の匂いが強いからだろうか だがぼくは昨夜から煙草を喫んでいない混じり合った汗の匂いは思い出せる ぼくは昨夜から汗もほとんどかいていない 自分のシャツを嗅いでみたところで なんの匂いか分…

短歌 12 首

だれとなくキスしたくなる午前 2 時 煙草だけしか相手はいない おれでないだれかを愛すあの人に見てほしくないこの流れ星 かつてあに道を記しし女〔ひと〕の書く言葉はいまだ遠いと知った あの人はぼくとキッスをしてたはずなのに雲雀*1に奪われていた 故し…

短歌 13 首

あの月の兎はきっとぼくの喫む煙草の煙嫌がりはせん あの雲はもしかしたらばあの月の兎の煙草の煙なのかも 後ろより聞こえくるのはわが国の言葉ではないそう信じたい こんな夜自分の性が疎ましくなってくるのだ 歓待を待つ 体温が欲しいだけなの性的なものは…

短歌 13 首

夜立ち上がりて思う なぜか痛いぐらいだ まだ足りないか あの娘から貰えなかったチョコレート Lark の煙全部喫み込む ワイシャツを新調したとうこととすら同じ重さで流れた知らせ あをここに連れて来し人夢にすら現れぬそももとより在らず 古布は古紙と一緒…

短歌 24 首

きみの名は分かるのだけど いろいろなものがただ上滑りして行く 喫みなれた煙草味の残ってる口腔だけは現前的で きみの名をその口の中で転がして見るけど いまはまだ分からない だれなのか分からないまま君という言葉を詠まねばならぬと思い 少年のようにで…

短歌 9 首

わずかだけ唇に触れたその髪の記憶が変容する午前 2 時 中庭で寄り添う 2 つの壊れたる椅子よ Syd Barrett を聴け 真夜中に襲い来るのは破壊衝動 Richard D. James のような笑みを浮かべて 煙草喫み椅子を壊して喚きつつ次のシケモクに火を着けて喫む こんな…

短歌 19 首

ようやっと帰りついたるその場所に独り待ってたきみは本物? *1 ただ一つその発言をする勇気ないからほかの言葉で埋める 街の子も塀を登れば山がある侮るなかれ想像力を 夢で見たことすら人に話すことできない恋をでも捨てられず 上階は奇術研究会のはず美女…

短歌6首

空港のための音楽聞きながらぼくは旅立つ夢の世界へ *1 雨の日に白いジーンズ穿いたのは雨水の色を知りたいがため 白色の可憐な傘に隠された制服の顔きっと可愛い ぼくはただ詩人になりたかったのさ あそうですかカツ丼は自費 わが想い駆り立てているもので…

短歌8首

詩人〔うたびと〕は息するように詩〔うた〕を詠む肺の奥まで弄〔いじく〕りながら*1 辛口のジンジャエール空き瓶の中に無意味な涙を溜める 友がみなぼくより偉く見える日よマクドコーヒーおかわり自由 近くにも遠くにもない逃れえぬ確信を今齎す女 深き夜に…

短歌 17 首

イブの夜にちり紙の量多いのは感冒のせい少し寂しい 風の鳴る夜いつまでも眠れない孤独の気配われを苛み 眠れぬ夜あなたがここにいてほしいそのあなたさえだれか分かれば TL に鈴木謙介現れて朝に気づいてカーテン開ける ぼくはまたおんなじようにミスをして…