歪んだ道

初老の男性が喪服に身を包み歪んだ道を歩く。すれ違いながら、その貌にまだ死の色がないことを、安堵しながら少し寂しく感じる。目の前には死を象徴する建物があるので、ぼくはその領域とこちら側との隙間をのぞき込んでみる。けれどもそこにはノスタルジーしかなかった。それはもはやぼく自身の過去ではない、捏造されたノスタルジーだった。

振り向くともう彼はいなくなっていた。もしぼくがその建物の横を通り抜ける前に、その道がもう歪んでいないことに気付いたなら、その先には何もないと悟っていただろうか。きっと、そこで戻るべきだった……。