匂い

かの女の煙草の匂いは
いつも朝には消えてなくなる
ぼくの煙草の匂いが強いからだろうか
だがぼくは昨夜から煙草を喫んでいない

混じり合った汗の匂いは思い出せる
ぼくは昨夜から汗もほとんどかいていない
自分のシャツを嗅いでみたところで
なんの匂いか分からない

甘いお菓子は食べつくしてしまった
そもそも食べたくもない
甘い匂いの記憶が
ぼくに胸焼けを起こさせるのだ

そして薔薇の匂いは消えない
赤い薔薇の匂いは消えない
かの女の煙草の匂いはしない
薔薇の匂いがすべてかき消す