完全な美はありえないか

完全な美などというものは、ありえないのではないだろうか。なぜなら、美を媒介する私たちの機能が不完全なものだから。美というものは、媒体の不完全さなどの要素の、その単純な集合として生じるものではない、ということを考え合わせるならば、これは完全な美を必ずしも否定するものではないかもしれない。しかし少なくとも、私たちの美の媒体としての私たちの機能の不完全性は、美の成立において、それが正のものか負のものかは分からないが、少なからぬ影響を与えている、と言うことはできよう。