短歌 9 首

わずかだけ唇に触れたその髪の記憶が変容する午前 2 時

中庭で寄り添う 2 つの壊れたる椅子よ Syd Barrett を聴け

真夜中に襲い来るのは破壊衝動 Richard D. James のような笑みを浮かべて

煙草喫み椅子を壊して喚きつつ次のシケモクに火を着けて喫む

こんなにも気持ちいい酒久しぶり暗い天井響く君の声

満月の雲持ち去りし星空のしたで明日をまだ語れるね

もし唖になったとしてもまだぼくは聞こえぬ声に怯えつづけん *1

星のない夜でもきみには変わらずに明日を見なよと云わなきゃいけない

郷の猫死にたるという便りさえ動かぬことの言い訳となり……

*1:cf. ジャックス, 「からっぽの世界」.